20世紀モダニズム建築の巨匠と呼ばれるレジェンドがいます。
ル・コルビュジエ。
19世紀の建築は、レンガと石で造る組積造が主流でした。
古代ローマ、古代ギリシャの様式建築を踏襲するのが、建築家の役割だったのです。
しかし、コルビュジエは、鉄筋コンクリート構造を学び、床や屋根、柱、階段だけが建築の大切な要素だと主張する、ドミノシステムを考案。
パリの都市構想においても、低層階の住宅をまんべんなく広げるより、高層マンションを建て、空いた土地に緑あふれる公園を造ることを提案しました。
採用には至りませんでしたが、斬新で大胆な発想は、既成概念にとらわれていた建築家、芸術家を驚かせました。
彼は、建築だけではなく、絵画、家具のデザイン、彫刻など、さまざまなジャンルで世の中をあっと言わせた唯一無二のアーティストなのです。
昨年、日本で唯一のコルビュジエ建築が、およそ1年半をかけてリニューアルされました。
上野の国立西洋美術館。
この世界的に有名な美術館の設計は、コルビュジエが担当。
建設にあたっては、彼の弟子であり、日本の建築界を世界に押し上げた重鎮、坂倉準三(さかくら・じゅんぞう)、前川國男(まえかわ・くにお)、吉阪隆正(よしざか・たかまさ)が協力しました。
世界遺産に登録されたこの建造群、リニューアルの最大のポイントは、前庭。
この前庭の景観を、1959年の開館時に戻したのです。
西門から入る導線は新鮮で、コルビュジエのこだわりが垣間見られます。
彼は、スロープ、ストロークを大事にしました。
建築物にどうやってアプローチするか、まず最初に見える風景は何か。
人間の微妙で繊細な目線に注目したのです。
なぜ彼は、日常に寄り添った視線を獲得できたのでしょうか。
そこには、彼の辛い挫折の日々が関係しているのです。
世界中に自らの痕跡を残した芸術家、ル・コルビュジエが人生でつかんだ、明日へのyes!とは?