第443話『孤独を恐れない』-【京都にまつわるレジェンド篇】数学者 森毅-
FEB 24, 2024
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京都大学の名物教授で、数多くのエッセイを書いた文筆家としても有名な、数学者がいます。

森毅(もり・つよし)。

東京大学数学科を卒業後、北海道大学の助手になり、29歳で京都大学で教鞭をとってから34年間、独特の語り口やユーモアあふれる授業で人気を博しました。

63歳で大学を退官後、多くの大学からオファーを受けましたが、全て断り、フリーランスとしてエッセイや評論を書き、積極的にマスコミにも顔を出し、数学の楽しさ、人生のよりよき生き方を指南。

多くのファンに愛されました。

森が提唱したものに、『人生20年説』というのがあります。

まずは過去の遺産で生きるのはやめよう、20年前の自分は、赤の他人。

そう考えれば、人生が80年とすれば、ひとは、4回生まれ変わることができる。

これは楽しい。ワクワクする。

第一の人生でつまずいても、大丈夫。

次の20年をまっさらな気持ちで生きればいい。

60歳を迎えたとき、森が下したのは、大学を去り、自由な大海原に漕ぎ出そう、という決断でした。

そしてそれを支えているのは、あえて孤独を恐れない、ということ。

京都の東山三条に、古い宿屋がありました。

そこには、年老いた犬が一頭いました。

犬は、いつもひとりで悠々と道を渡ります。

旧国道一号線。

どんなにクルマが通っても、急がず、動じず、堂々と渡ります。

その様子を見た森は、これだと思ったのです。

「みんなで渡れば怖くない」ではなく、「ひとりで渡れば危なくない」じゃないか、と。

たったひとりの、犬。

彼を見たドライバーは、クルマを停め、微笑んで彼が道を渡るのを見届けます。

これがもし、何匹もの犬が、おどおど、ビクビクして渡っていたら…。

ドライバーは、つい、クラクションを鳴らしてしまうかもしれません。

ひとりだから、認められる。ひとりだから、カッコいい。

おのれの生き方でよりよい人生を指南した賢人、森毅が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?
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