現在の岩手県久慈市出身の「柔道の神様」がいます。
三船久蔵(みふね・きゅうぞう)。
身長は160センチに満たず、体重は50キロ半ば。
圧倒的に不利な体格で、講道館柔道の最高位、十段を授けられたレジェンドです。
柔道の長い歴史の中、十段を取得したのは現在15名しかいません。
ちなみに十段の帯は、黒帯の上、赤帯です。
最近では3年前、1992年のバルセロナオリンピック、男子71キロ級で金メダルをとった古賀稔彦(こが・としひこ)が、数々の偉業をたたえられ、九段に昇格し、話題になりました。
53歳で亡くなる、前日のことでした。
九段、十段の赤帯は、ただ単に強さだけではなく、競技の普及や後進の育成など、柔道界への多大なる貢献が、昇段の決め手となります。
三船久蔵は、小柄な体格ながら、新しい技を次々とあみだし、柔道というフレームを大きく伸ばし、拡大したのです。
故郷の久慈市には、三船十段記念館があり、「若き日の三船久蔵」「三船久蔵と講道館」「三船と将棋」「三船と書道」というテーマに沿ってパネルが展示されています。
さらに、圧巻は、彼が考案した「空気投げ」の貴重な映像。
大きな相手をうまくさばき、タイミングを崩し、気がつけば相手が転がっているという、三船の必殺技です。
資料館の隣には、柔道場も併設されており、彼の精神を受け継ぐ若き道場生が稽古にやってきます。
三船には、流儀がありました。
「大切なのは、心の中心をブレないようにすること」
そのために彼は、65年間、たったの一日も稽古を休まなかったと言います。
心の中心がブレていなければ、体重移動しても、ふらふらとよろけても、すぐに体勢を立て直すことができる。
彼の流儀は、技ではなく、心の持ち方にあったのです。
三船は、後輩たちに言いました。
「相手に勝とうと思うと、相手の心が自分の中心を乱す。
ほんとうの相手は、自分の中にしかいない」
名人という称号を与えられた賢人・三船久蔵が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?