

次世代の特効薬はカナダの雪深い北部のどこかにあるのでしょうか?化学者のノーマンド・ヴォイヤーが、寒さの中で生育する植物が持つ神秘的な分子レベルの宝物を探索している、この美しく極寒の風景を旅しましょう。ほとんど研究されていないこれらの微生物は、医学的に大きな可能性を秘めている、と彼は言います。その発見が手遅れにならないように、私たちが迅速に取り組めば、ですが。


北極圏の氷が溶けると北極グマが陸に追いやられ、彼らは飢えてしまいます。食物連鎖の頂点に立つこの捕食動物が、人間の出す廃棄物処理場に餌を求めてやって来るのです。その為北極圏の町では、人間と野生動物の安全を守るために、創造力を働かせる必要がありました。生物学者で自然保護活動家のアリサ・マッコールは、この偉大なる動物たちとの安全な付き合い方、そして気候変動によって徐々に彼らとの「共存」を強いられる未来について、現場からの教訓を共有します。


神経科学者のセルジュ・P.パスカは、人間の脳がどのように自己形成するのか、また何が病気に罹りやすくさせているのかを解明することをライフワークとしています。このトークでは、彼のチームが画期的な科学技術を駆使し「オルガノイド」や脳の「アセンブロイド」(回路形成能力を持ち自己組織化する幹細胞由来の神経組織の塊)を培養する方法を発見し、これら神経系のミニチュアが脳の解明に迫る方法を説明しています。


mRNA(メッセンジャーRNA)を使った医薬の秘密は、体に対して自分で病気と戦う方法を教えるということであり、新型コロナや、長い間人類を悩ませ続けてきたがんやインフルエンザその他の病気の画期的な治療につながると期待されています。RNA研究者であり、新型コロナワクチンの短期開発に貢献したモデルナ社の最高科学責任者メリッサ・J・ムーアが、分子のレベルまで降りていって、mRNAがいかに体内のタンパク質を助けて、体の健康を維持し、病気を予防し、遺伝子コードの誤りを正せるようにするのかを解説します。人類は薬の新時代を迎えたのだと彼女は言います。


パンデミックのない未来の実現は容易ではないがそのためのツールや戦略があり、投資が必要だとビル・ゲイツは言います。この未来志向の講演で彼は、パンデミックになる前にアウトブレイクを発見し抑えるための多様な専門家からなる「世界的感染症緊急対策(GERM)」チームの創設を提案しています。病気の監視、研究開発、医療システムの改善に投資することで「誰もが健康で生産的な人生を送れ、次のパンデミックを恐れずに済む世界」は作れるのだと。


科学者たちは、牛は温室効果ガスであるメタンの莫大な発生源で、地球全体の排出量の4%に及ぶことを長い間知っていました。牛の草食を減らすという方法があるかもしれませんが、動物科学者のアーミアス・カブリーブが、海面下で育つ海藻を家畜の飼料にして牛のメタンを多く含むゲップを減らす独創的な解決策を話します。


光と音のエネルギーを使って、病気を検知できるでしょうか。TEDフェローのレイ・リー氏が、光を音に変換し体内の様子を画像化できる、低価格・無痛・高精度な「光音響イメージング」の可能性について語ります。この最先端技術が、乳がんの早期発見から医療用マイクロロボットの操縦まで、病気の観察、追跡、診断において、どのように新しい世界を切り開く可能性があるかを学びましょう。


アルツハイマー病の治療に脳波を使えたらどうなるでしょうか。教授で神経科学者のリー・ファイ・ツァイは、光と音の療法でガンマ波を人工的に刺激するという有望な新しい取り組みについて詳しく述べています。この取り組みは脳神経細胞の結合と同期を高め、致命的なこの病気の発症を遅らせます。この非侵襲性療法は既にマウスで効果が得られていると報告されています。現在、人での臨床試験中で、全ての人の明るい未来の先導役となる可能性があります。(トーク後、TED責任者 クリス・アンダーソンとの質疑応答があります)


バイオ炭はある種の炭で、CO2除去と農作物の質と量の向上に貢献し、また製造過程では電気として再生可能エネルギーも生み出します。この素晴らしい気候変動対策方法はついに規模拡大の時を迎えました。起業家のアクセル・レイノーがこの物質を農家がもっと活用できるようにする3つの方法を説明します。これにより食料システム、エネルギー供給網、そして気候変動問題は大いに改善することでしょう。


あなたのお腹と脳は会話をしています、と肥満研究家のマース・タング=クリステンセンが言います。肥満は遺伝、環境に影響を受ける病気であるという科学的証拠を示し、脳と腸の両方に見つかり食欲を制御する分子を紹介します。その使用方法を工夫すれば肥満患者が健康的に体重を減らすことができるかもしれません。


映画監督・建築家のリアム・ヤングが見事に描き出した、100億人が暮らすSF的な仮想都市プラネットシティへの旅に出ましょう。世界の全人口を収容するために設計された都市空間がどのような結果を生み出すのかを探り、地球のために何ができ、何が持続可能かを想像してみましょう。


SF作家の陳楸帆は、ディストピア的な未来を恐れていません。むしろ、人工知能の進歩は私たちの生活をより良く、より健康に、より安全にすると信じています。彼は私たちをAIの20年後のツアーに連れて行き、私たちを待ち受けているであろう科学技術の進歩についての驚くべき予測を語ってくれます。「私たちが創造したいと思うすべての未来について、私たちはまずそれを想像することを学ばなければなりません」と彼は言います。


宇宙は爆発に始まりましたが、どう終わるのでしょう? 宇宙論研究者でTEDフェローのケイティ・マックが、見事な映像とともに、何兆年か先に理論的に訪れる全ての終わりをめぐる、膨大な時間と空間の中における存在と好奇心と人類の遺産についての深い思索へと誘います。


今持っていた物をどこへやったか分からない、有名俳優の名前が思い出せない、部屋に入った途端にそこにいる理由を忘れてしまった -- そんな経験はありませんか?神経科学者リサ・ジェノバが日常起きる二種類の記憶障害を掘り下げて、物忘れしても全く正常と安心させてくれます。後半のTEDサイエンスキュレーター、デイビッド・ビエロとの対話では、一般的な物忘れとアルツハイマー病の兆候の違いを説明し、脳の容量に関する俗説を覆すと共に、脳の健康と鋭い記憶を維持する方法を教えてくれます。(このオンライン対話はTEDメンバー限定イベントの一環です。TEDメンバーになりたい方はted.com/membershipまで)


「生物の世界で体を構築の役割を担うものはDNAだけではありません ― 神秘的な生体電気の層が存在し、細胞たちがその指示に従って協働することで、臓器やシステムや体全体が形成されるのです」と生物学者のマイケル・レヴィンが語ります。印象的かつ革新的な双頭の扁形動物の映像とともに紹介されるのは、細胞が交わす電気的な暗号の解読を元に研究室で作られた、世界初の生体ロボット「ゼノボット」です。この発見が医学と環境と生命自体の将来に何をもたらすのか、彼が説明してくれます。(TEDのクリス・アンダーソンが司会を務める本トークは2020年6月に収録されました。)


2020年4月、疫学を学んでいるソフィー・ローズは新型コロナウイルスに自ら感染することを志願しました。若く健康な大人である彼女は、ヒトチャレンジ試験に参加することを申し出たのです。ヒトチャレンジ試験とは、ワクチンを試験するために意図的にSARS-CoV-2を参加者の体内に入れて、臨床データを集める研究のことです。チャレンジ試験によって有効なワクチン開発をいかに加速できるかを説明しながら、自分にとって進んでボランティアになることが正しい選択であった理由を彼女が教えてくれます。


都市では、無数の植物や動物や昆虫が人間の作り出した生息環境に見事に適応しながら、絶えざる進化を遂げています。進化生物学者のメノ・スヒルトハウゼンは、ファストフード好きのネズミや涼しい体を作り出すカタツムリなどの奇妙な生き物を例に、変化し続ける都市の野生生物の驚異を描き出し、熱心な市民科学者の世界的ネットワークの助けを借りてこの現象をリアルタイムで観察できることを語ります。


精密医療とワクチン学が交わる領域で、革新的な科学の追求が行われています。個別化ワクチンです。感染症のスペシャリストであるオファー・リーヴィがこの有望な医学的アプローチを紹介します。個別化された予防接種が、疾病を非常に危険なものにしている突然変異に対抗できる可能性があるというのです。また、今、人間の生命を持続させ支える新時代に差し掛かっていることを話します。


調査ジャーナリストのキャサリン・イーバンは、「ジェネリック医薬品は、その先発品と本当に同一なのか?」という一見簡単な質問に関する記事を書くことにしました。出てきた答えがきっかけになり、10年にわたるインタビュー、内部告発者とのミーティング、4大陸にわたる現場レポートを行い、FDAの機密文書を探ることになりました。警告を喚起するこのスピーチでは、イーバンが、海外の製造工場で何が起こっているかを話し、多くの低コストなジェネリック医薬品に隠された不正を暴きます。


地球と人類と自然は密接な関係にあり切り離せません。世界に野生を取り戻して、私たち皆の健康を取り戻そうと、環境保護活動家のクリスティン・トンプキンスは訴えます。 パタゴニア社のCEOを経て熱心な活動家になった人生と、南アメリカに何千平方キロメートルもの土地と海からなる国立公園を設立するのを支援した経緯を振り返り、さらに私たちが地球を修復するために行うべき重要な役割を論じます。 「私たちは運命共同体であり、繁栄の道を歩むにしても苦難の道を歩むにしても、皆が共に歩むしかないのです」とクリスティンは語ります。


緊急救命室(ER)の医師は混乱を極める中、いかにして心を鎮め集中をするのでしょうか。長年の経験から、ERの医師であるダリア・ロングが日々の生活が“めちゃくちゃ忙しい”と感じ始めたときに冷静に落ち着いて対処できる明快な仕組みを紹介してくれます。


生物学的構造のあるものはあまりに小さく、最も強力な顕微鏡でも見ることができません。分子アニメーション作家でありTEDフェローのジャネット・イワサの腕の見せ所です。分子がどのように働くのかを映像化したうっとりするようなアニメーションで、広大な目に見えない分子の世界を探検してみましょう。


北アメリカ各地の先住民族の言語は、植民地時代の文化抹消の影響で絶滅の危機に瀕していると言語学者のリンジー・マーコムは述べています。言語と地域社会の復興を目指したカナダのアニシナーベ人による草の根戦略に焦点を当て、彼女は次世代のための先住民文化の保護を目指した政策の制定への情熱を語ります。


世界中でオオカバマダラの生息数は激減しており、この迫り来る絶滅は人類の生活をも危機に晒しています。けれども、作家のメアリー・エレン・ハンニバルによると、市民科学者がこの昆虫を保護する一助になるのです。この草の根活動に参加するボランティアたちが、減少の一途を辿るオオカバマダラの観測と保護にどのように大きな役割を果たしてきたのか、そして皆さんが自然保護を手伝うための入会方法などを学んでください。(良い仲間がいますよ。チャールズ・ダーウィンは市民科学者だったのです!)


気候変動のような大きな問題に立ち向かうには、科学と先住民の知恵の両方が必要だと、環境活動家のヒンドゥ・ウマル・イブラヒムは主張します。 この引き込まれるトークでは、絶滅に瀕した生態系を取り戻すために、チャドの遊牧民コミュニティが科学者とどうやって密に協力したのかを紹介。 そして、より打たれ強いコミュニティの作り方のヒントを与えてくれます。


気候変動問題は巨大で複雑すぎて確実な方法で解決できる問題ではない、と作家のデイビッド・ウォレス・ウェルズは言います。私たちに必要なのは生き方を変えること。地球温暖化が進む時代に、住みやすく豊かな世界をつくるために私たちがとれる劇的な行動の一端について、彼の説明を聞いてみましょう。


「海は生来クジラの歌声、魚の低い音、 テッポウエビ、氷の割れる音、風の音や雨の音などに溢れています。けれども海洋生物にとって、船のエンジン音から石油掘削の音にいたるまでの人工音が深刻な脅威となっています。」と科学ジャーナリストのニコラ・ジョーンズは語ります。海の騒音公害に直面した海洋生物に起こった知られざることを論じ、直接的な影響を調べるために騒音を減らす簡単な方法を共有するビデオをご視聴ください。


アチョケと呼ばれる、メキシコ北部のとある湖に生息する外来種の(そして愛らしい容姿の)サンショウウオを救うべく、科学者たちは思いもよらないパートナーと協力関係を結びました。それは「われらが健康の聖母教会」という修道院のシスターたちです。この愉快なトークで、BBC科学担当編集委員のヴィクトリア・ギルが、珍しい協力関係がどのようにアチョケを絶滅の危機から救い、地元住民や先住民がいかに地球に存在する奇妙かつ素晴らしく、最も絶滅の危機に瀕した生物を救う鍵を握っているかについてお話しします。


「トライボロジーという変わった響きの言葉は初耳かもしれませんが、人々の現実世界の見方と関わり方を変えるものです」と機械工学のエンジニア、ジェニファー・ベイルは言います。トライボロジー(摩擦と摩耗の科学)の考え方と日常生活におけるその意外で多様な実例、それがよりよい世界にどのように貢献するかを、ベイルが説明します。


海に変化が起こると、地球にも変化が起こり、そしてそれは微生物から始まる、と海洋生物学者のアンジェリク・ホワイトは言います。ホワイトは、数十年分のデータにより裏付けられた事実をもとに、どのように科学者らが古くから生息する微生物を海の健康状態の重要なバロメーターとして活用しているか、また海水温度が上昇する中、私たちがどのように微生物を再生しうるかについて話します。